星子(空35)

 

                                                                        カメ太郎

 

 

 

 ゴロ、星子さん。

 

 また空の上だ。もうあれから何年経つだろう。カメ太郎が大学を卒業できなくて、最後の年、大阪まで気功法を学ぶために飛んだ。あれ以来だと思う。

 あのときカメ太郎はたしか28だった。今、35になっている。もう医者になって5年目だ。あれから一年半後、カメ太郎も医者になった。

 今、長野へと向かっている。7カ月、無職だった。7カ月前、長野のその病院から帰ってきて、それから7カ月、全く無収入だった。カメ太郎は敗れ去って長野に戻るのではない。長崎で充分、勉強し、研究し、そして戻るのだ。分裂病や神経症を鍼で治す方法をカメ太郎は見つけ出したから帰るのだ。そしてそれを試せるのは長野のその病院しかない。カメ太郎はだから使命に燃えて帰っている。

 分裂病・神経症に苦しむ人たちを救うのだ。そのために帰るのだ。長崎からとても遠いけど帰るのだ。

 ゴロ、星子さん、今回は富士山が見える。

 

 

http://sky.geocities.jp/mmm82888/index.htm