冬子さん(7)

 

                                       カメ太郎

 

 

 

 

 冬子さんは病気で寝ていて僕は当直だ。今日、病院から冬子さんの携帯へ2回(もしかしたら3回)電話した。冬子さんは今日は寝ていると言う。『こんなに何も役に立てなくてごめんなさい』と電話の向こうで冬子さんは言っていた。

 僕は冬子さんの病気を治すため、昼間、いろいろと勉強した。隣の薬局に置いてあるクスリをいろいろと調べた。比較的強い女性ホルモン剤が必要と思われた。でも、それよりも何かが、別の何かが必要にも思われた。

 今日は寝坊して題目があまり上がっていない。決断力も頭の回転も鈍っている。体が疲れている。

 僕は疲れている。冬子さんも疲れている。僕たちは2人とも病気で苦しんできている。今も2人とも苦しんでいる。

 結婚するとき『2人とも病気でやってゆけるのか?』と反対された。

 

 一日経ったけど、冬子さんは病気で寝ている。『私がこんなに病気が酷かったとは知らなかったでしょう。私、先生のアパートに来るときはいつもサリイタミン(非常に良く効く鎮痛剤)を飲んでいたの』

 一昨日、真夜中、夜1時頃(僕は疲れ果て眠たくて眠たくてたまらなかったけれど)、冬子さんが僕から背中を肘で指圧していたときに言った。冬子さんにとって僕のアパートに来ることも大変だったようだ。

『でも幸せでした。婚前前、1ヶ月、2ヶ月の頃の日曜日は特に。いえ、2年半前から付き合いだしたときから幸せでした。初めて僕の以前のアパートで始めてセックスしたとき、僕はとてもとても感動しました』

『僕、舌が良く回らなくて「冬子さん」が「冬子さん」になってしまうけど、すみません』

『でも「冬子さん」の方が「冬子さん」より良いです。「冬子さん」の方が可愛いですもの』

 そして僕は冬子さんにそっくりなカエルの小さな人形をパソコン台の前に置いていた。この前、パソコンに忙しくて、その「冬子さん人形」を隣のパソコンデスクに追い遣って横に倒したままにしていたのを冬子さんは悲しんだ。

 今日は当直でないから帰れる。でも僕は昨夜当直で疲れている。そして明日も当直だ。

 

 

               完

 

 

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