桃子さん(15年)

                          

                            カメ太郎

 

 

『カメ太郎は死なず』の信念の元、10年生きてきた。最近、2年ほどは慢性疲労症候群と戦ってきた。対人恐怖は依然として続いていた。給料は安く、依然として未婚であった。独身20年。独身との戦いにも疲れていた。毎日、朝、起きれなくて、遅刻だった。倦怠感が続き、自動車事故を起こし続けていた。貯金も底を付き始めていた。医者なのに、こんなに貧乏だった。嫁の来手が無かった。疲れていた。いつも疲れていた。

 アパートを借りるより、一戸建ての家をローンで買うか、マンションをローンで買うかした方が良いと思ってきていた。給料は安いけれど、毎日遅刻でも許されるこの気楽な病院にこのままずっと居ようかと思ってきていた。分裂病で苦しんでいる人を救う、という誓いはどうしたのだという自責の念にも苦しんでいた。

 長崎大学の精神薬理学教室に今春から入り、そしてそこで分裂症や神経症に苦しんでいる人たちを救う画期的な薬を作り出し、誓いを果たす、という思いも有った。長崎の精神科の病院から引き合いが来ていた。しかし決心が付かないでいた。

 長崎の精神科の病院に勤めながらなら長崎の精神薬理学教室に通い、その誓いを果たすことができる、という考えも有った。

 

 

                           

 

http://sky.geocities.jp/mmm82888/2975.htm